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将棋界でよく使われる表現の一つに“不調も3年続けば実力”という言葉があります。

 不調と言ってももし、それが3年間も続いてしまったならばそれは不調ではなくて自分の実力というシビアな話でもあります。

 実力という時は素直にそれを認めて努力をして地力をつけて次のチャンスを狙うことになります。

 しかし、不調というケースもあるのです。

 どんな物事でもそうですが今日、実行をしたことが明日、結果や成果となって表れることはありません。

 1カ月とか3カ月、長いものでは1年くらいの期間を経て形となり、花を咲かせて実を結ぶことになります。

■“不調”とは「実行から結実までの時差」

 つまり、実行してから結実をするまでには明らかな時差があるのです。

 この時差の期間のことを“不調”と呼ぶのでしょう。

 不調の時には実行をしていることを変更はできません。

 そこで変えてしまうと元の状態に戻ってしまい発展がなくなってしまいます。

 しかし、不調の期間は不安や心配な気持ちになりやすいものです。

 その時に役に立つのがこれまでの経験値なのでしょう。

 つまり、これぐらいの変革はこれくらいの時間が必要と知っていれば、不調の期間であっても割り切って集中をして前進を続けることが可能になります。

 不安な気持ちになって減速をすることもないですし、方向転換をして複雑な状況を生むこともありません。

 また、諦める時にもその経験値は役に立つものと考えています。

 このテーマにはこれくらいの不調の期間が必要だが、現実的に効果が上げにくいという判断も可能になるからです。

 将棋の世界においても新しい作戦をマスターするにはプロといえどもある程度の時間を必要とします。


■無駄が重なって将棋の厚みに

1996年には王将戦を制し七冠となった(2月14日、山口県豊浦町)
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1996年には王将戦を制し七冠となった(2月14日、山口県豊浦町)

 時間をかけて習得したとしてもその時には流行が終わっていて意味がないという悲しい事態もよく起こります。

 しかし、最近ではその戦法がこれから先も使えなかったとしても、少なくとも経験値は上げることができたと思うことにしています。

 無駄と思えることでも将来は形を変えて役に立つこともあります。

 それは先を読むという点でも同様で、たくさん読んだとしても実戦ではその通りにはならないことも多いのです。

 無駄な読みとも言えるかもしれませんが、それらが重なって将棋の内容の厚みをつくっているのです。

 時間の短い対局よりも長い対局の方がワンサイドになりにくいのは、お互いに無駄な読みをたくさんしているからだと考えています。